両界曼荼羅図
りょうかいまんだらず
概要
曼荼羅は、真言密教(しんごんみっきょう)の世界観を絵画化したものです。中央に、宇宙の真理そのものとされる大日如来を、その周りにさまざまな仏や菩薩が一定の秩序にしたがって描かれています。両界曼荼羅とは、真言密教でもっとも重要とされる二つの経典、「金剛頂経(こんごうちょうきょう)」と「大日経(だいにちきょう)」に基づく、金剛界(こんごうかい)曼荼羅と胎蔵界(たいぞうかい)曼荼羅をセットにしたものです。金剛界は悟りへの道筋を表し、胎蔵界は慈悲の広がりを表すとされます。
そして、宇宙に太陽と月があるように、金剛界と胎蔵界の二つの曼荼羅があることによって、一つの世界が表されるのです。
二つの曼荼羅は、寺院の堂内で東西に向き合うように安置され、その間で修法(しゅほう)と呼ばれる密教の儀式を行うことによって、仏と一体となることを目指します。
この作品は、鎌倉時代に描かれたもので、細かい描写と美しい色彩が見どころです。
胎蔵界は2013年度、金剛界は2014年度に本格修理を行い、額装されていたものを掛け軸の形に改めました。修理の際、絵の裏から、過去の修理のときのものと思われる、年代を示す文字の一部や、親兄弟、配偶者や子供を意味する「二親六親」(にしんろくしん)という文字を墨で書いたものが発見されました。はっきりした時代や誰がということはわかりませんが、こうした文言は、死後の供養や未来の幸せを願って何かをした、という記録に用いられることが多いので、この作品もそうした人々の思いのなか、大切に守り伝えられてきたのでしょう。