柳蔭釣舟図
りゅういんちょうしゅうず
概要
右下の近景では岸辺に岩塊を配して広葉樹と柳を組み合わせ、水上の船では二人のうち左側の人物が釣り糸を垂れる。中景では柳を含む木立ちのなか建物のそばで紅白の花が咲き、遠景では山下の漁村の汀に数艘の船が浮かぶ。その表現描写や落款印章から作者と判明する奥原晴湖(1837-1913)は、近代文人画の代表的な女性画家のひとりで、谷文晁(1763-1840)の門人・牧田水石(1796-1863)に学び、渡辺崋山(1793-1841)に私淑するなど、近世絵画の表現様式を継承したことが知られている。本図は、年代自体は近代の作品ではあるが、江戸時代の文人画の系譜に位置付けることができる伝統的な作風を示す。
<畑靖紀執筆, 2024>