博多鋏の製作技術
はかたはさみのせいさくぎじゅつ
概要
本件は,鎌倉時代に南宋(なんそう)からの帰化人(きかじん)がもたらしたと伝えられているもので,江戸時代には博多の刀鍛冶が製作するなかで改良が加えられ,明治時代以降,刀鍛冶が鋏鍛冶に特化して今日まで受け継いできた技術である。
製作は,大きく,地切(じぎ)り,ワカシツケ,粗(あら)叩(だた)き,ナラシ,生研(なまと)ぎ,焼き入れ・焼き戻し,本研(ほんと)ぎ,足曲(あしま)げ,カシメという9工程からなり,職人は,これを1人で寸法等をほとんど測らず勘だけで製作する。
地切りは鉄の棒から基本の形状を粗々に作る工程で,続くワカシツケは地金に鋼をつける工程である。粗叩きは全体を整形する工程で,その後,金槌(かなづち)で何度も慎重に叩(たた)きながら刃の絶妙なかみ合わせを調整するナラシを行う。そして生研ぎで凹凸(おうとつ)を削ってから,魔除けともいわれる菱(ひし)紋(もん)などの刻印を打つ。
焼き入れ・焼き戻しは,かみ合う2枚の刃の強度を同じにする工程で,火(ひ)床(どこ)での加熱色を見ながら絶妙なタイミングで水に入れて急冷する。
仕上げに,本研ぎで細かな整形をし,足曲げで持ち手部分を作ってから,最後に目釘(めくぎ)を通して2枚の刃を組み合わせるカシメを行う。
所蔵館のウェブサイトで見る
国指定文化財等データベース(文化庁)