紙本墨画松竹図屏風 長谷川等伯筆
しほんぼくがしょうちくずびょうぶ はせがわとうはくひつ
概要
本図は、左扇の左端から右上方に向って大きな松樹が描かれ、右扇の右端まで緩やかな曲線を描いて枝を伸ばしている。下部には土坡が描かれ、左扇の松樹の後方から孟宗竹が茂り右扇へと続き、濃墨を効かせながら淡墨と描き分け、巧みに遠近感を表している。
老松の樹皮の表現や、竹の節と節の間の稈に横に2筆濃墨を入れる独特の表現、墨の濃淡によって風になびく葉叢を巧みに表現した部分は、他の等伯作品の表現と極めて近い。なかでも本図は、メリハリの利いた墨の濃淡表現や、速筆で一気に描いた迷いのない幹の線、墨の艶や調子、筆法など、等伯の代表作である国宝「松林図屏風」へ繋がる表現であり、注目に値する。
制作年代については、墨色や筆の勢いなどから、「猿猴図屏風」と同じく50歳代後半頃の制作と思われる。
形状については、右扇と左扇の各中心に縦の変色が見られることから、現状は6曲屏風の4扇分で、以前は左右にもう1扇ずつあったと考えられるが、描いた当初は、さらに大きな寺院内壁貼付画の一部という可能性もある。