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定武蘭亭序(呉炳本)

ていぶらんていじょ(ごへいぼん)

概要

定武蘭亭序(呉炳本)

ていぶらんていじょ(ごへいぼん)

/ / 中国

原跡:王羲之筆

制作地:中国

原跡:東晋時代・永和9年(353)

紙本墨拓 

31.8×17.0

1巻

 この巻き物は、東晋時代、4世紀に活躍した官僚で、書家として著名な王羲之の「蘭亭序」の拓本です。王羲之は、黄海(こうかい)に面した山東省(さんとうしょう)の東南部に位置する、今の臨沂(りんぎ)市の名門貴族の家に生まれました。官僚としての業績以上に王羲之が高く評価されたのは、彼の書が歴代の皇帝や権力者によって尊ばれたことによります。王羲之が生きた時代は、隷書(れいしょ)から派生した草書(そうしょ)や行書(ぎょうしょ)が、日常的に使われる書体として行なわれていました。王羲之はこの普段使いの書体で、時代を先取りする新たな表現を確立して、書を芸術の域にまで昇華させたのです。
 「鳳が舞い上がり、龍がとぐろをまく」とは、唐王朝の第二代皇帝・太宗(たいそう)が王羲之の書を批評した言葉です。太宗は、各地に散在する王羲之の書を国家規模で収集して一大コレクションを築き、鑑定や書に優れた宮中の役人に整理させたり、複製を作らせました。その太宗が非常に愛するあまり、没後自らの陵墓に一緒に埋葬させたと伝えられる名品が「蘭亭序」です。
 「蘭亭序」は、王羲之が赴任先の会稽山陰(かいけいさんいん)の蘭亭、今の浙江省紹興市(せっこうしょうしょうこうし)の風光明媚(ふうこうめいび)な土地で、41人の名士と宴(うたげ)を催し、その際につくった詩集に付した序文の草稿です。他の王羲之の書と同じように、オリジナルの真跡(しんせき)は伝わらず、模本や拓本などの複製が残されます。本作品の「蘭亭序」は、太宗に仕えた欧陽詢(おうようじゅん)が王羲之の筆跡を忠実に写した臨書(りんしょ)をもとにした拓本です。欧陽詢の臨書が刻まれた原石が、北宋時代11世紀に定武、今の河北省定州市(かほくしょうていしゅうし)で発見されたことから、これをもとに作られた拓本は、「定武蘭亭序」と呼ばれます。かつて元時代の呉炳という人物が所蔵したことから、「呉炳本」とも呼ばれるこの作品は、宋時代にとられた定武蘭亭序の古い拓本として著名な一巻です。呉炳のほか、書や絵画に関する歴代の名家たちが鑑賞して、題跋(だいばつ)という文章を書き添えたり、数多くの印が押されました。古色蒼然とした拓本の字姿が、古来愛され、珍重されてきたことがわかります。

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