布袋図
ほていず
概要
顔を正面に向け、歩みを進める布袋の姿。口を大きく開け、眉毛や目尻を下げてあやしい笑みを浮かべている。描いたのは江戸時代前期に活躍した河村若芝(1630-1707)。佐賀藩龍造寺家出身と伝えられ、長崎において長崎唐絵の創始者とされる逸然性融(1601-68)に師事し、癖のある道釈人物画を得意とした。逸然は日本黄檗宗の開祖である隠元隆琦(1592-1673)の日本招聘にも尽くした長崎・興福寺の僧で、弟子である若芝の身近には常に黄檗文化があった。そのことを示すように現在50点ほど知られる若芝作品のうち賛を伴うものは半数ほどあるが、その多くが黄檗僧による着賛である。画面上部の賛文も、能書として知られ、萬福寺第7代住持を務めた福建省出身の悦山道宗(1629-1709)がしたためている。右下には若芝の落款印章があり、「丁卯季中秋日」(貞享4年〈1687〉8月15日)に記したことが明らかとある。