童子形鏡像
どうじがたきょうぞう
概要
鏡面に童子形(どうじぎょう)を毛彫(けぼり)で表した鏡像(きょうぞう)。童子形は右手に杖、左手に独鈷杵(とっこしょ)を持してやや向かって左を向き、両足を開いて仁王(におう)立ちする。面部は忿怒(ふんぬ)の相を示し、垂領(たりくび)の上衣に裳(も)を着けて表される。裳は腰帯のところで大きく折り返す。裳裾は左に大きくなびき、動勢を示すと思われる。杖と独鈷杵を執る童子形は、不動明王(ふどうみょうおう)の眷属(けんぞく)である制吒迦(せいたか)童子の図像に例があるが、制吒迦童子が上半身を裸形とするのに対し、本品は垂領の衣をまとっており、尊名は確定しがたい。なお、両肩に紐を通すための鐶(かん)を作り出しているが、その大部分を欠失している。鐶を有することから、懸仏(かけぼとけ)への移行期の遺例とみられ、制作は平安時代末期頃と考えられる。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.19, no.4.