菊池川堤防のハゼ並木
きくちがわていぼうのはぜなみき
概要
菊池川堤防のハゼ並木は、菊池川河口を約2kmさかのぼった大浜橋から上流へ支流の繁根木川を渡るJR鹿児島本線までの約3.7kmである。この右岸に237本のハゼノキが植栽されており、最も太い個体は幹周3.5m、樹高の高い個体は14.3mにも達している。
ハゼノキはウルシ科の落葉高木で、関東南部以西の山野に自生している植物であるが、木蝋の原料としては江戸時代、あるいはそれ以前に中国から導入されたものを植栽したといわれている。木蝋生産と関連したハゼノキの植栽は江戸時代から九州を中心に行われ、各地で品種改良が行われた。根固の目的で、川沿いの土手などに多く植えられ各地で並木がつくられてきたが、木蝋生産の衰退とともに植栽地は減少し、多くのハゼが失われた。菊池川堤防沿いに残されたハゼ並木はかつての木蝋生産の名残であり、かつての面影をよく伝えるものである。
熊本(肥後藩)では、寛文4年(1664)にハゼが特産品奨励として植栽され、寛文11年には玉名他十ヶ郡にハゼ苗植え付けの触が出された。本格的な植栽のはじまりは享保9年(1724)頃といわれ、菊池川堤防のハゼもこの頃から植栽が開始されたものと考えられている。その後、精蝋所を藩直属の「櫨方」とし、櫨蝋の専売制がしかれ藩の収入となった。最盛期には藩内のハゼ樹木数は約70万本、収穫されたハゼの実は約500万斤(3000トン)に及んだといわれている。現在の菊池川周辺では木蝋生産は行われていないが、玉名市教育委員会ではハゼノキ個体の台帳をつくり、大きさ、樹勢、生育状況等の管理を行っている。秋には美しく紅葉するハゼ並木として、市民に親しまれている。
菊池川堤防のハゼ並木はかつての木蝋生産のために植栽・利用されたもので、現在に残された並木としてもよく保存されており、登録記念物として保護を図るものである。