銅鉾(愛媛県川之江市出土)
どうほこ(えひめけんかわのえししゅつど)
概要
銅質の良好な中鋒(なかさき)銅鉾で、穂部は中央でくびれ、刃部は左右ともに刃こぼれがあり、鋒(きっさき)部付近には土の中に挿しこんであったためか擦痕がみられる。袋部は断面が楕円形をなし、その両側面は鰭(ひれ)状を呈し、銎(きょう)(袋部)の深さは約4.3センチメートルである。袋部の基部には節帯がみられ、その位置は耳のほぼ中央部に設けられる。耳は基底部から1.8センチメートル上に付設されるが、紐孔は塞がったままで、文様もみられない。 出土状況は愛媛県の東端に位置する川之江市のほぼ中央を流れる金生川の河原田橋の下流約150メートルにあたる浅い川床の中で、穂先を先にして上半の3分の2近くを土砂の中に挿し込んだ姿で発見され、その他の伴出遺物はみられなかった。この鉾は日本製で、狭鋒(せまさき)銅鉾から広鋒(ひろさき)銅鉾に移行する過程の中鋒銅鉾である。中鋒銅鉾は北部九州~四国(筑前・筑後・豊後・伊予・讃岐・土佐)の海岸沿いに主に分布するが、この鉾もそれらの中の1例として重要な位置を占めている。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.277, no.2.