浜辺

絵画  油彩画 / 明治 / 日本 

藤島武二 (1867-1943)
ふじしまたけじ
1898(明治31)年
油彩・板
23.5×32.5
額装

 油絵というと、木枠に麻布を張った、いわゆるカンバスに描くものという印象が強い。けれども、布自体も麻ではなくて、綿を使ったものもあるし、油絵は厚紙や板、銅板などにも描くことができる。そして、どの材質のうえに描くかによって、画面の肌合い(マチエール)が変わってくる。
 この作品は、表面がなめらかな一枚板に描いてある。制作されてから百年近く経過しているにもかかわらず、この絵には、亀裂や剥落などの痛みがない。板のそり返りに気をつけて、材料を選択すれば、板は布に比べて伸縮がすくないため、亀裂などが生じにくく、作品は長持ちする。
 「浜辺」の描き手順を注意深く観察すると、絵具の重なり具合から、遠景の空を先に描き、島と海を描き、手前の釣り舟と浜辺を最後に仕上げているのがわかる。
 遠景から描き始て、中景、近景にいたる手順は、風景を描く場合の基本で、かりに手前から描きすすめていくと遠近感を出すのは、非常に難しくなる。
 この作品は、構図こそ平凡だが、風景画の基本を踏まえながらリズムある筆のタッチ、それに鮮やかな色彩が、画面に躍動感をもたらしている。
 藤島武二は、三重県尋常中学校助教諭を経験した県ゆかりの作家である。(田中善明)

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