観音菩薩立像
かんのんぼさつりゅうぞう
概要
三面宝冠の正面に坐化仏を現し、左手を垂下して水瓶を受ける観音菩薩立像。法隆寺献納宝物183号の銅造観音菩薩は持物を欠くがほぼ同形で、三山形に平たく結った髻(もとどり)、上下につまった面相と涼しげに微笑む表情、鬢髪(びんぱつ)の形、天衣のかけ方などをはじめとする服制など共通点が多い。ただし本像の方が小振りで、表現も簡略化されたものとなっている。また秋田・正伝寺、根津美術館の観音立像も類似するところが多く、形相や作風に広がりが見られる点興味深い。
臘型(ろうがた)の一鋳で作られるが、瓔珞(ようらく)の一部に別製のものを取り付ける(一部は欠失)。これは、天衣・瓔珞を体部から出来るだけ遊離したものとして現そうとする意識が働いたものであろう。像底の両側には角ほぞを造り出していたことが、それを切断した痕跡により判明するが、この構造はやはり献納宝物183号像と共通する。両像が同一工房で作られた可能性を考える上で重要である。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.292, no.69.