二重像
にじゅうぞう
概要
1907年、広島県山県郡に生まれた靉光は、本名を石村日郎(いしむらにちろう)といい、小さな頃から絵が大変得意な少年だったという。1923年に大阪の天彩画塾、翌24年には上京して太平洋画会研究所に学ぶ。この頃からの靉光の画友、寺田政明氏に、この作品を描いたのはメソ(面相筆)だと教えていただいた。しかし、この細密な線の密集を毛筆で描けるのか?よく研いだペンを使ったに違いないと言う意見も多く耳にした。そこで拡大鏡を使って覗いてみた。ペン先が引っかかったササクレはまったく見当たらない。線の上にも筆圧の痕跡がない。ペンでないのは間違いない。確かに寺田さんの教えてくださったとおりだったが、この小さな画面にこれだけの線を引く、線で描く、靉光の絵に対する執念と集中力を感じさせる作品だ。