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不空三蔵表制集巻第五

ふくうさんぞうひょうせいしゅうまきだいご

概要

不空三蔵表制集巻第五

ふくうさんぞうひょうせいしゅうまきだいご

その他 / 平安 / 関東 / 東京都

東京都

平安

1巻

東京都港区南青山6-5-1

重文指定年月日:20050609
国宝指定年月日:
登録年月日:

公益財団法人根津美術館

国宝・重要文化財(美術品)

 『不空三蔵表制集』は、唐僧不空(七〇五~七七四)の弟子円照【えんしょう】(七一九~八〇〇)が八世紀末ころに編纂したもので、六巻からなる。構成は、不空から皇帝に差し出された表、不空の奏状に応えて皇帝が出した制を中心に祭文や碑銘など一三三首を編年体に収載している。内容は①朝儀【ちょうぎ】や政治に関するもの、②翻経に関するもの、③修寺、造像、法会などに関するもの、④僧侶の身分や人事に関するものに大別される。
 この『不空三蔵表制集』は、空海請来【しょうらい】目録に「大唐大興善寺大弁正大広智三蔵表答碑六巻」と見え、諸写本には石山寺旧蔵本のほか、東大寺東南院旧蔵本(平安前期)、東寺観智院蔵本(平安中期)、高山寺蔵本(院政期)などが知られている。
 本巻の体裁は巻子装、料紙に楮紙打紙【うちがみ】を用い、淡墨界を施す。巻頭下に黒印「石山寺」が捺されており、もと石山寺に伝来したことが知られる。なお、本巻以外の石山寺旧蔵本はいずれも重要文化財に指定されている。
 巻頭に「凡二十九首/答制十六/惣四十五首」とあり、その後に目次を掲げる。本文は、目次を一行にて書き、次に本文を引用し、末行に年月日および差出を記す。平出【へいしゅつ】、闕字【けつじ】が本文中に見えることから、もとの姿を忠実に書写したもので、唐代の文書様式を知ることができる。年代は大暦七年(七七二)六月から同十三年八月までの六年間である。大暦九年六月十五日に不空が示寂しているので、本巻は示寂後における僧俗の諸弟子の手になる上表【じょうひょう】、その他不空関係の諸文を併せ収めている。
 制には、示寂直後の七月七日に弟子恵朗【けいろう】に対して後学を教授すること、また同日恵勝に対して塔所において香火を焚いて守護するように勅するものなどがある。
 表には、たとえば大暦十年六月十五日が不空の小祥忌【しょうしょうき】に当たることから、恵朗は千人供および茶二〇〇串、弟子二人を賜うように奏上している。また同十一年四月五日、恵朗等は不空の碑を立てることを請うている。さらに、恵果【けいか】(七四六~八〇五)は錦綵【きんさい】を賜ったことを謝し、その中で少年のころより二十余年不空に仕えたことを述べている。
 本巻は真言宗第六祖である不空の事跡および恵果をはじめとする弟子らの伝などを研究する上での第一級の史料であるのみならず、唐代における不空を中心とする真言密教を知る上での根本史料の一つであり、仏教史、文化史研究上に注目されるものである。

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