貫之集〈第五残巻、第八/(村雲切本)〉
つらゆきしゅう
概要
紀貫之の歌を集めた『貫之集』の平安時代末期の写本で、村雲切と呼ばれる古筆切本のまとまつた遺巻である。
本文は、薄茶地の色紙に金銀の小切箔を散らした装飾紙に書かれ、現状は巻子本に装幀されているが、これはもと粘葉装冊子本の各葉の表裏を剥いで継いだものである。『貫之集』第五の末尾部分二紙(六首)および第八(完存)の十三紙(二十七首)を存し、現状は第八、第五の順に継がれている。書写の体裁は一紙七~八行宛、和歌は一首二行書き、詞書は一字下げに書かれ、本文の筆者は未詳だが、文中しばしば集付、訂正等の書き入れがある。この書き入れはその書風よりみて藤原定家(一一六二-一二四一)の筆と認められ、第八の二十七首のうち「かけるとて」云々の一首も定家の追筆である。
『貫之集』は伝本が多く、本文にも異同が多い。本巻はいわゆる他撰本系に属するが、平安時代末期の装飾本私家集として貴重であり、他撰本貫之集の諸本の成立過程を知る上でも注目される。
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