甲原松尾山のタチバナ群落
かんばらまつおやまのたちばなぐんらく
概要
タチバナは古くから日本人に親しまれ、万葉集では初夏を彩る花として詠まれている。平安京の紫宸殿南庭に植えられた「右近の橘」は著名であり、文化勲章はタチバナの花をモチーフとしてデザインされている。またミカン類の野生種として遺伝資源としても重要である。しかし、野生の生育個体数は少なく、環境省のRDBに挙げられている。
指定予定地は土佐市甲原地区の松尾山東面の小さな尾根上に位置する。ここは石灰岩が露出した急傾斜の岩角地で、ここに約200本のタチバナが生育し、日本最大規模の群落を形成している。このような石灰岩の露岩地帯であるため、生産活動には利用されず、タケや常緑樹などの高木の侵入も少なく、タチバナが生き残ることができた。タチバナは好石灰岩植物ではないが、陽樹で常緑高木等に覆われる衰退するため、このような特殊な立地で生き延びてきたものと考えられた。タチバナの学名は明治中期に牧野富太郎が発表したが、牧野が報告した最初の産地の一つがこの指定地と考えられている。
このように、古くから親しまれたタチバナの最大規模の群落として学術的価値が高く重要である。