常善寺本堂須弥壇
じょうぜんじほんどうしゅみだん
作品概要
常善寺本堂は、現在コンクリート製に建て替えられているが、須弥壇は壇上の木造阿弥陀三尊像(重要文化財)および仏後壁(滋賀県指定有形文化財)とともに中世の遺構をとどめている。須弥壇の斗束の形状は古いもので、格狭間の形状も上辺が直線的になり、やや形式化したものではあるが、中世らしい形態をとっている。
また、須弥壇下部の周囲に優美な反花状の蓮弁を備えることを大きな特徴としている。反花状の蓮弁をそなえる須弥壇の事例や正面中央で内側に切り込んで階段を設けること、さらに高欄の正面中央では架木を蕨手にすることは、いずれも鎌倉期の須弥壇にみられる。また、当初材と思われる部材の手斧の仕上げの状態から、中世にさかのぼる遺構と見てよかろう。ただし、木目塗は、細かく形式化した木目表現で、保存状態から見てもいかにも新しく、框の天明の修理銘に塗師名があらわれることからも、天明の修理に際して塗り直したものとみるべきであろう。上框・下框に打ち付けられた飾金具も後補とみられる。
造立の契機としては、建長五年(一二五三)の本尊阿弥陀三尊の造立や旧本堂の棟札に建長五年建立とあることを勘案するならば、本堂や本尊阿弥陀如来とともに一具のものとして造立されたと考えるのが自然と思われる。
次に、須弥壇両側に設けられた室町時代頃の板絵は、各一体ずつ、計四体の尊像が描かれる。すなわち、北側手前が不動明王、奥が持国天。南側の手前が毘沙門天、奥が増長天と思われる。高欄の痕跡からも、後世に不動・毘沙門天および二天を扉絵として追加したものと考えられる。