馬ノ図真形釜
うまのずしんなりがま
概要
茶の湯釜の原型とされる釜は、中国大陸から伝わったとされ、奈良時代の文献中には既に鉄製の釜が登場している。日本において茶の湯釜の制作が本格的になるのは、喫茶の風習が盛んとなる鎌倉時代以降である。茶の湯釜は、外型と中子を組み合わせることにより、中空の鋳型を構成する惣型鋳造によって制作される。鋳型の原料には、川砂や粘土等が用いられ、鐶付のデザインにも工夫が凝らされる。渋みのある色合いは、漆の焼き付けによるものである。
この作品は、真形の古芦屋釜を踏襲しており、その姿には豊かな量感と安定感がある。胴には力強く疾走する馬の躍動感あふれる姿が、篦押しによって表現されている。篦押しとは、下絵を描いた吉野紙を裏返しにして生乾きの状態の鋳型の表面に水で貼り付け、金属の篦で押し描くようにして転写する方法である。鋳込みの後型をハズスと、鯰肌ともよばれる暗い艶のある鋳肌に、筆で描いたかのような肥痩のある線で文様が鋳出されている。昭和58年度文化庁工芸技術記録映画「茶の湯釜‐角谷一圭のわざ‐」の対象作品である。
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国(文化庁 工芸技術資料)