高島市海津・西浜・知内の水辺景観
たかしましかいづ・にしはま・ちないのみずべけいかん
概要
「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」の特徴は、琵琶湖をはじめとする河川・内湖、扇端部の湧水を水源とする小河川、さらに増水時に冠水する水田等によって形成される多様な水界である。これらはそれぞれ、地域固有の豊かな生態系を示し、特に魚類は多様である。その多様性に併せて発達した伝統漁法に、河川を簀で遮断し、遡上する魚を漁獲部分に誘導するヤナ漁や、カラスの羽を着けたサオで湖岸に寄るアユを驚かせながら網に追い込むオイサデ漁等がある。漁法以外にも、洗濯のための「橋板」や「イケ」と呼ばれる水場や共同井戸など、多様な水文化が残る。
本地区が歴史的に本格的な発展を遂げるのは、日本海から琵琶湖を経て京都に向かう湖上交通網が整備された15世紀以降のことである。特に江戸時代においては、宿場・港町として多くの人や荷物が行き交い、内湖を活用した荷物の積み出しや受け取りが行われ、旅人を相手とする商売が栄えるなど、港湾都市としての様相を呈していたと考えられる。特に海津は、陸路と航路の結節点に当たり、地域の生産品である淡水魚や石灰を含む多くの物資を、京都・大阪に運ぶ上で重要な場所となった。以上から「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」は、古来より北陸道や琵琶湖の湖上交通を背景として、輸送や商業活動それに携わる人々の流通・往来が生み出した重要な文化的景観である。