鍋島直大宛て筆姫書簡
なべしまなおひろあてふでひめしょかん
概要
特命全権公使としてローマ在勤中の鍋島直大(なおひろ)に、母の筆姫(10代佐賀藩主鍋島直正継室)が宛てた自筆の書簡。直大の長女朗子(さえこ)と長男直映(なおみつ)は、ローマ渡欧直前に直大夫人の胤子が病没したため、直大の留守中は筆姫が養育にあたった。
この手紙で筆姫は、二人の孫と、直大の婚約者である竹姫(栄子/ながこ)の間柄に触れ、「お竹殿(栄子)やさしく成られ候故、よふ朗(朗子)・映(直映)さんともなしみ」「私も実に実に大安心致し候」と安堵の気持ちを伝えている。
さらに筆姫は、「永田丁十三番地普請も漸々出来、過日廿九日健子殿(貢姫・慈貞院)引移られ同日私も参り候、余程御歓び成られ候。明二日は御同人誕生日、又引移り祝い成られ候につき、私初■参り候ようにとの御事、庭も広く景色宜しく出来に相成り候」と記す。直大の姉で、早くに夫の松平直侯を亡くしていた慈貞院(貢姫)の新居引越しや誕生日に筆姫らが訪れること、さらに「当三日には早稲田大隈邸へ私初め弁当にて参り候約束」として旧佐賀藩士大隈重信邸での交流予定を伝えている。