宮垣外遺跡 土坑64出土品
みやがいといせき どこうろくじゅうししゅつどひん
作品概要
宮垣外遺跡は、飯田市上郷に所在した墳墓群で、大小の円墳・小規模低方墳・土壙墓で構成される。また、古墳周溝内や土壙内からは殉葬された6頭文の馬歯骨が出土したことから、当該墳墓群は馬匹生産集団の墓と考えられる。本遺跡は溝口の塚古墳の南側に隣接しており、溝口の塚古墳を含めて古墳時代中期(5世紀)に築造された古墳群として捉えることが可能である。
平成8~10年度に実施した一般国道153号飯田バイパス(3工区)建設に伴う発掘調査で、円墳(SM03)の周溝内土壙(SK64)から、馬歯骨とともに鉄製馬具一式が出土した。馬具から5世紀後半の年代と考えられる。馬具は馬に装着された状態のものではないが、馬具が単なる威信材ではなく、馬の装具としての実用性をもつことを如実に示すものといえる。本土壙から出土した馬具は金属製馬具の一括資料であり、特に鉄製f字形鏡板付轡と剣菱形杏葉は国内の類例と比べても古式に属するものであることから、両形態の馬具の変遷を考える上での基礎資料として位置つけられる。
飯田市内ではこれまでに5世紀中頃から後半にかけての馬の埋葬が28例確認されており、全国的にみても早い段階に馬が導入された地域として知られる。また、市内で確認された馬具を伴う馬の埋葬例は4例ある。馬と馬具の共伴は県外では宮崎県島内地下横穴墓群、群馬県剣崎長瀞西遺跡などに出土例があるが全国的にも類例は限られる。こうしたことから、本遺跡出土品は初期の金属製馬具の一括資料として、また当地方への馬匹文化の受容の実態を示す資料でもある。