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溪四題(雲の峰・夏の月・秋霧・雨後)

概要

溪四題(雲の峰・夏の月・秋霧・雨後)

日本画

寺崎広業  (1866-1919)

テラサキ、コウギョウ

明治42年/1909

彩色・紙本・軸・4幅対

各127.5×63.0

「夏の月」「雨後」左下に落款、印章; 「雲の峰」「秋霧」右下に落款、印章

3回文展 竹之台陳列館 1909

3
溪四題(雲の峰、雨後、秋霧、夏の月)
Four Scenes of Mountain Stream : Hills with Clouds, After Rain, Autumn Mist, Summer Moon
1909年
絹本彩色・軸(4幅)
各127.5×63.0cm
第3回文展出品作。第1回は正派同志会が、第2回には国画玉成会がボイコットしたため、この回に文展開設以来初めて各派が一堂に競うこととなったこともあって、審査委員である広業も四幅の大作を発表した。信州の上林温泉の奥での写生にもとづいて描かれたもので、広業はこの土地を好んで訪れており、後には別荘も建てている。支持体には知人から贈られたものらしい中国の紙を用いており、墨の滲みや絵の具の発色に独特の風合いがみられる。広業は狩野派の修業の後様々な画風を吸収しているが、こうした紙の扱いは日光時代に南画家菅原白龍に学んだと言われている。出品の記録では《雲の峰》と《雨後》とが「其の一」、《秋霧》と《夏の月》とが「其の二」とされており、二幅ずつの対幅として描かれたことがわかる。《雨後》は晩夏かあるいは初秋の山あいの風景で、驟雨の後みるみる雲が晴れてゆく様子が表されている。《雲の峰》では緑の美しい夏山と青空の色彩の対比がみずみずしい。《夏の月》は墨彩を生かして夜の風景を、《秋霧》は切り立った峡谷の深さを表現している。四季ではなく夏と秋だけを取りあげ、時間的にも自由な組み合わせがなされているところに、南画を基礎にしながらも伝統に縛られない姿勢が見られる。朦朧体の作品を意識しつつ折衷的に新しい表現を作り上げた彼の作品は、初期文展時代の主流であったと言えよう。

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