月夜の縞馬
つきよのしまうま
概要
七彩会第1回展(1936)出品
節子の作品には珍しく冷たい色調で、夜の闇の中で黒い紐に絡まった2頭の縞馬が月へ向って首をもたげ、それを黒い線で描かれたはかなげな人々が見上げる様子が描き出されている。ガラス製の縞馬をもとにしており、「月夜の縞馬」というテーマには夫好太郎との思い出が関係している。好太郎は31歳の若さで早世するが、存命中は子煩悩で、「お伽噺の会」と称して子供たちに題を出してお話を作らせる会を開き、その中に「お月様と縞馬」という題もあったという(「みづゑ」367号、1935年4月)。同時期、同じように月夜の縞馬をテーマに描いた他の作品について次のように語っている。「久しく馬を描き度いと思っていてタブローの下塗り等をしている折に、即興的に描いたものであるが、之は期日がないのと病中無理をして仕上げたので弱さばかりが目立つ様だ。えがきなれた室内の様には仲々にこの新らしいモチーフは自由になってくれないが私はそれを楽しみにして今馬のタブローをえがいている。」(「みづゑ」374号、1936年4月)。同様の構図の絵は、『チャタレイ夫人の恋人』(D.H.ロレンス著、伊藤整訳、1935年)の表紙絵にも用いられており、また1936(昭和11)年の第6回独立展にも<夜>と題して出品されている。
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一宮市三岸節子記念美術館