年月未詳31日付 島田孝之宛田口卯吉書簡 ねんがっぴみしょうさんじゅういちにちづけ しまだたかゆきあてたぐちうきちしょかん

文書・書籍 / 明治 / 富山県 

田口卯吉 (1855~1905)
たぐちうきち
富山県高岡市
(明治期)年月未詳31日付
紙本・墨書
縦16.5㎝×横56.3㎝
1
富山県高岡市古城1-5
高岡市(高岡市立博物館保管)

 田口が島田に宛てた書簡。「先日何か揮毫を差し上げようと思っておりましたが、まだお届けしておりませんか。私も年老いて耄碌して忘れてしまいまして、どうかお許しください。とにかく頂いていた絹が手許に無いので、もう一枚送って頂きたくお願い申し上げます」とし、末尾に島田の作品に感銘して作った短歌を添えている。二人の親密さがうかがえる。
 年代は未詳。明治の中頃から、田口が亡くなる同38年(1905)の間であることはいえるであろう。
 本史料にはヤケ、シミなどがみられる。
 寄贈者によると、本史料の入手経緯や、もう1通の田口卯吉から島田宛書簡をなぜ同じ扁額に表装したのかなどは不明とのことである。ただ、下記の田口略歴によると田口は、「合理的根拠に立つ経済的思考の必要性を啓蒙した。特に(明治/引用者注)13年に保護主義的経済論に立つ犬養毅の『東海経済新報』と論争を交えたことは著名である。」とあり、田口と犬養が論争をしたという接点が見えてくる。また、意見の異なるものであっても、広く交際をもっていた島田の人柄もうかがえる。
 しかし、この2通の書簡自体には直接的な関連性は無い。

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【釈文】
拝啓、過日何ニカ
揮毫差上候様ナ
心地仕候得共、未ダ
御届ヶ申上候ハザリ
シ乎、老翁毛六
忘却之段、御海
恕可被下候、
兎角御遣之絹、
手許ニ相見不
申候、更ニ一葉
御送付奉願候
也、匆々拝、
三十一日 田口卯吉
 島田賢台
     机下
尊作感吟多事
  二ヶ月程前
年寒みまた
  咲き出てぬ
 ■(梅)か枝々
鳴く鶯も春を
   まつらむ

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【意訳】

拝啓、先日何か揮毫を差し上げようと思っておりましたが、まだお届けしておりませんか。私も年老いて耄碌して忘れてしまいまして、どうかお許しください。
とにかく頂いていた絹が手許に無いので、もう一枚送って頂きたくお願い申し上げます。草々。

貴方の作品に感銘して作った短歌。忙しくて二ヶ月程前の作です。
 年が寒いのでまだ咲かない梅の枝よ
 枝に止まる鶯も春を待っていることだよ

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【注】
【田口卯吉】たぐち うきち
生年:安政2.4.29(1855.6.13) 没年:明治38.4.13(1905)
 江戸の徳川家の御家人田口樫郎と町子の次男に生まれる。本名は鉉,号は鼎軒。卯年の卯月に生まれたことから通称卯吉という。幼少期に父と兄を失い,赤貧のうちに育った。明治維新(1868)によって徳川家が静岡に転封されるに伴い沼津に移り,沼津兵学校でフランス式兵学を学ぶ。医学学習を命じられて上京し,東大予備門に入ったが,授業への不満から退学。明治5(1872)年大蔵省翻訳局に入り洋書翻訳に当たったことが経済学を学ぶ契機となった。翻訳従事のかたわら諸新聞に政治論,経済論を投書,10年沼間守一らが創立した嚶鳴社に参加した。また同年,日本文明の開化を自由主義的立場から叙述した『日本開化小史』第1巻を出版し文名を高めた。 11年に官を辞し翌12年1月雑誌『東京経済雑誌』を発刊した。モデルは英国の経済雑誌『ECONOMIST』にあり,当初は渋沢栄一の択善会の援助を受けたが,のちに自立し独立で経営した。『東京経済雑誌』では,自由主義的な経済論,財政論を展開し政財界に影響を与えるとともに,各種の経済統計や市況を掲載し合理的根拠に立つ経済的思考の必要性を啓蒙した。特に13年に保護主義的経済論に立つ犬養毅の『東海経済新報』と論争を交えたことは著名である。15年自由党の創刊した『自由新聞』に客員として参加し経済関係の論説を担当した。また両毛鉄道株式会社創立に参加したり,南方開拓のための南島商会を設立するなど自ら実業に乗り出したが,成功はしなかった。経済論とならぶ田口の関心は歴史にあり,24年雑誌『史海』を発刊,25年久米邦武の「神道は祭天の古俗」を転載し大論議のきっかけをつくった。大規模な歴史資料集『国史大系』や『群書類従』の出版を実現するなど歴史学の発達に貢献するところは大きい。27年の初当選以来死去まで衆院議員を務め政界でも活躍した。彼の言論には自由主義的思考が一貫しており,明治期を代表する経済論,政論の論客であった。<著作>『鼎軒田口卯吉全集』全8巻<参考文献>塩島仁吉編『鼎軒田口先生伝集』(有山輝雄)
(HP「朝日日本歴史人物事典」1994、朝日新聞出版/2018年9月19日アクセス)

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