千手千眼陀羅尼経残巻(玄昉願経)
センジュセンガンダラニキョウザンカン(ゲンボウガンキョウ)
概要
千手観音の姿の由来と陀羅尼(呪文)の功徳を説く経典。巻末の願文によれば、天平十三年(七四一)に玄昉が聖武天皇と国家の安寧を祈願して同経典を一〇〇〇巻書写させたことが知られる。本経典はその唯一の遺例。書写の前年には藤原広嗣が玄昉の弾劾を求めて反乱を起こしており、これが写経の契機であったか。典雅にして秀麗な書風は、奈良朝写経の優品に数えられる。また、経文には平安時代後期の読み方が加筆されており、国語学的にも貴重な資料である。