梅と椿の静物
概要
幕臣の長男として江戸に生まれる。12歳で開成所画学局に入学し、川上冬崖や高橋由一から西洋画法の手ほどきを受けた。1871(明治4)年、徳川家留学生として政治法律研究を目的にニューヨークに赴くが、目的を画学研究に変更し、パリ、ヴェネツィアへと転じ、1881(明治14)年に帰国した。留学中に日本の伝統を再認識した川村は、帰国後、油彩画の技法や構図で日本の画題を描くことにこだわったとされる。
本作品では、日本画を思わせる縦長の絹に、油彩画の技法により、釣瓶に入れられた梅、桜、桃と、椿が描かれ、伝統的な花木図を連想させる。本作品は、「芳春四妍」と題され、1927(昭和2)年の「川村清雄画伯全作品展覧会」に出品されたと考えられている。春を象徴する4つの花が「妍」、すなわちその艶やかさを競うかのように描かれる。日本画的趣向の強い作品の性格から、帰国後間もない明治時代前期に制作されたと目されている。