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帰路

概要

帰路

油彩画

野田英夫  (1908-1939)

ノダ、ヒデオ

昭和10年/1935

油彩・キャンバス・額・1面

97.0×146.0

右下に署名、年記

22回二科展 東京府美術館 1935

38
帰路
Way to Home
1935年
油彩・麻布 97.0×146.0㎝
「作家の世界の深度が造型的知性と相俟(あいま)って渾然(こんぜん)として花束の如く美しく表現された時、吾々は一つの絵画に何度も足を運ばずに居れないのである。」と野田英夫は述べた。そしておそらく、いかに優れた作家であっても、そのような不可思議な力を秘めた作品を、そう何点もは生み出し得ないはずである。《帰路》を描いて4年後、30歳の若さで野田が突然逝ったのも、してみれば自然な事とも思われてしまう。それ程までに《帰路》は不思議な絵である。三人の人物、花束、奇妙な建物、畑、引かれた幕、石塀、テーブルといった、互いに脈絡のつきにくい様々なモティーフが折り重なり合いつつ並置されている。人物のうち二人は腕組みをし、うつむき、歩いている。中心の男は、絵具が塗られた上を釘か何かで削る技法で、その輪郭線を改めてなぞられているので、まるで二人の人間が合体しているかの様に見える。画面全体にみなぎる比類ない透明感に眼が洗われる一方、堅固な質感が強い安定感をもたらしている。《帰路》は見る者の内に様々な言葉、様々な感慨を誘発してやまない。そしてそのいずれに対しても、この作品は親身に反応してくれる。だが、いかなる言葉、いかなる解釈も、この絵独特の不思議さを解消させはしない。イメージの魅惑は時を経て一層熟し、我々は結局またこの作品の前に足を運ばずに居れないのである。

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