斉雲館印譜
せいうんかんいんぷ
概要
父の辛(しん)甲(こう)に手ほどきを受けた呉昌碩の篆(てん)刻(こく)は、地元の浙(せっ)派(ぱ)の作風を基礎として、呉(ご)熙(き)載(さい)・趙(ちょう)之(し)謙(けん)・徐(じょ)三(さん)庚(こう)らの作風や金石資料の趣を加味して、早くから独自の風を打ち出します。切れ味の鈍い印(いん)刀(とう)を用いて、適度な固さの線質や古色をつける技法を特徴とします。
呉昌碩が33歳時に編んだ斉雲館印譜は呉の印譜の中でも早期の作例です。「呉(ご)昌(しょう)石(せき)于(う)壬(じん)戌(じゅつ)歳(さい)難(なん)中(ちゅう)所(しょ)得(とく)書(しょ)」朱文方印では、塼(せん)の直線的で素朴な趣の字姿や古色などを参考にしていることが窺えます。太平天国の乱の最中、19歳時(壬戌)に母と許嫁(いいなずけ)が病没しました。