竜の夢(ドラゴンズドリーム)

その他 

谷中安規 (1897-1946)
タニナカ、ヤスノリ
昭和14年頃/c.1939
木版(多色)・紙・1
21.6×28.0
8回日本版画協会展 東京府美術館 1939

110
ドラゴンズドリーム
Dragon''s dream
1939(昭和14)年
木版、紙 21.2×27.5㎝
woodcut
第8回日本版画協会展
リアリストになりきれないロマンチストであり、現実に足をつけて生きるよりも空想の世界に遊ぶのをよしとしたアウトサイダーであった谷中安規は、内面のヴィジョンを自由奔放に木版に託して、詩的、幻想的な心象風景を作品にした。夢想と追憶と現実が錯綜した世界を、木版の平明で柔らかい線と落ち着いた色調で表現する谷中の版画にしばしば登場するのが、ときにユーモラスな姿態の、裸の子供と裸婦である。裸婦は、6歳の時に亡くなった母への思慕が生んだ女性像であろうか。〈竜の夢〉もその一作で、展覧会出品作のためか、あるいは竜王が夢みる女性像であるからか、とりすました、威厳と知性を見せる表情の女に描かれている。背をもたせかけてくつろぐ裸婦を前面に大きく描き、右の幕の向こうに金魚鉢を描いて、ひろがりと奥行きを見せる画面構成はしっかりしていて、密度があり、上部の竜の頭を起点に右から左へと女の顔に向かって、女体に沿って旋回する線によって画面に力動感が見られる。谷中の後期の版画の質の高さを示す力作である。

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