阿須賀古神宝類 唐花双鶴文鏡
アスカコシンポウルイ カラハナソウカクモンキョウ
概要
明徳元年(1390)、禁裏・仙洞・室町殿(足利義満)と諸国守護らが熊野十二社と摂社阿須賀宮に調進した神宝の内、阿須賀宮古神宝に所属するとされる大型白銅鏡の三面(I甲68-24・I甲68-25・I甲68-26)。十二社へ調進されたとされる熊野速玉大社古神宝(国宝・熊野速玉大社蔵)にも同工同大の鏡が十二面あり、都合十五面が伝えられる。ただ鏡文様の組み合わせが、蒔絵手箱および内容鏡などの意匠と合わず、面数も『熊野新宮御神宝目録』などの記載と食い違い、本鏡ほか三面を阿須賀宮奉納品とする史料的根拠は薄い。それはともかく、大型鏡十五面と手箱内容鏡のうちの白銅精良鏡はいずれも銅質・鏡胎・篦押し技法が同一で、明徳元年調進に伴い製作されたことはほぼ間違いない。また、精良鏡であるのみならず、時期や製作の具体像が判明するきわめて貴重な作品群である。なおこれらには、蓋裏に錫平文により桐・瑞雲・鳥を表した黒漆塗鏡箱が伴っている。