照子素画

絵画  水彩 / 大正 / 日本 

岸田劉生 (1891-1929)
きしだりゅうせい
1919(大正8)年
水彩・コンテ・紙
36.2×28.4
額装

 左上の文字が示すように、この肖像画の主、照子は画家の妹である。彼女の表情は極めて穏やかで、時にただならぬものさえ漂う劉生の他の作品とは趣をやや異にしている。しかし、やはりここには、他の作品と共通する何か非常に堅固なものが秘められているのが感じられる。
 「素描は美術の骨子である」と説く劉生は、単なる油彩画のための下けいことして素描をみる考えをしりぞけ、これを「美にいきなりふれることのできるもの」ととらえた。そして形の骨子として線、特に輪郭線の重要性を説いている。しかし、彼は決して才気走った切れ味を示す線でさっと一挙にかたちをとらえたりはしない。むしろ不器用さを感じさせるほど慎重に、確実に対象をとらえ、実現していこうとする。その粘り強さの先にこそ、こうした容易に崩れそうにない堅固さが生み出されてくるのではないか。 (土田真紀)

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