オンフルールの木の桟橋
概要
フランスはノルマンディーの港町、オンフルール。印象派の先駆者の一人であるヨンキントは、しばしばこの風景を描いた。この作品は、ヨンキントの好んだ港の穏やかな表情を、即興的で軽快な雰囲気を持つエッチングの線によってとらえている。
ところでよく見ると、彼の線は、時折まっすぐな線のはずが、思わず曲がってしまったような表情を持っている。それはとくに、雲と、それから遠くの舟が吐き出す煙におしげなく発揮される。右から左へと流れる大気の動きというよりも、雲の形を生け捕りにしたかのような線の作り方、毛玉のような塊をくるんくるんとさせながら、途切れることなくひたすら横に連なる煙。なんだかヨンキントの微笑みが見える。 (桑名麻理)
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三重県立美術館