御使、香炉wo手ni持te、

ヨハネ黙示録(4)

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御使、香炉wo手ni持te、

ヨハネ黙示録(4)

版画 / リトグラフ(石版画) / ヨーロッパ

ルドン、オディロン (1840-1916)

1899年

リトグラフ・紙

31.0×21.3

額装

 第七の封印が解かれる場面である。香炉を持った天使(御使)が御座の前に設けられた金の祭壇上に香を捧げるため、祭壇の前に立つ。デューラーの「黙示録」第8場面「七人のラッパを吹く天使」においては、男性的な姿をした天使が、テキストの記述とは異って、祭壇の後に座り、香炉に火を満たして地上に投下する。天使が持つ香炉からは細いきのこ雲状の煙が立ち昇っている。ルドンでは有翼の天使が右手に鎖の付いた香炉を持って画面中央に庁立し、瞑想にふける仏陀のように、手前下方を静かに見やっている。背後に描かれた翼は、注意して眺めなければ、つい見過ごしてしまうほどに薄く描かれた。デューラーとは逆に、清純な女性の姿にされた天使は、頭部から爪先までの長い衣服を身に纏いながら、乳房や腹部の線を暗示的に示しており、しかも盛期ゴシックの人像円柱(スタテュー・コロン)のような伸びやかな垂直軸をもつ形姿を示している。聖徒たちの祈りに合わせて神の御前に立ち昇る香の煙は、天使の白い姿を際立たせるために、朦朧と立ちこめる黒煙として視覚化された。この観音像を想わせる天使の表現には、ルドンが関心を抱いていた東洋趣味(オリエンタリスム)の刻印がはっきりと認められる。さらに見逃せないのは、画面の隅々にまでゆきわたる優美で繊細な描線と色価(ヴァルール)の表現であろう。こうした特徴は、優雅で洗練されたフランスの伝統的な造形感覚といえるものである。ルドンは「ギュスターヴ・フローベールに」(1889年)連作石版画で頂点に達した凄みのある暗黒のヴィジョンの世界を脱け出して、今まさに典雅な東洋趣味の世界に融化しようとしているかのようである。(中谷伸生)

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