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ヨハネ黙示録表紙

概要

ヨハネ黙示録表紙

版画 / リトグラフ(石版画) / ヨーロッパ

ルドン、オディロン  (1840-1916)

1899年

リトグラフ・紙

63.7×44.2(本紙)

額装

 まず〈表紙絵〉は、若干灰色がかった厚手の和紙に刷られており、デューラーの「聖ヨハネ黙示録」の表紙上部に描かれた華麗なゴシック風唐草装銘文字と比較すれば、かなり簡素な装銘文で、Apocalypse de Saint Jean(聖ヨハネ黙示録)と表題が書かれている。表題の下には神の栄光を象徴する梨型の輝く光輪が描かれ、その最上部には広げた両翼で光輪の大きな輪を繋げている鷲が見られる。いうまでもなく、永遠を凝視する鷲は聖ヨハネのアトリビュート(属性)である。ヨハネ伝説によると、福音者ヨハネは神の奇蹟によってギリシアのパトモス島へ連れさられ、その地で人々を戦慄させる神の啓示を眼の当たりにしたと伝えられている。だが、この物語と相違する解釈が最近認められつつあり、それによると『黙示録』を記したヨハネと福音者ヨハネ(あるいは使徒ヨハネ)とは全く異なる人物であるという。この〈表紙絵〉では両者を同一人物と見傲す中世以来の見解が踏襲された。もっともルドンは、このモティーフを16世紀初頭の第2版に付加されたデューラーの〈表紙絵〉から直接ヒントを得て採用したと思われるので、この鷲に関する図像学的な詮索は大して意味がない。鷲の足元には縦縞模様の入ったドームが描かれ、その下には七つの封印(留金というべきか)によって閉じられた大きな書物が、『黙示録』の象徴として画面の中心に配置された。さらに右側には、世の人々に恵みをもたらす「いのちの木」が、また書物の下には、黒白の対照を示す二輪の花が咲いている。(中谷伸生)

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