ヨハネ黙示録(7) また、もうひとりの御使が、天の聖所から出てきたが、彼もまた鋭いかまを持っていた。

版画  リトグラフ(石版画) / ヨーロッパ 

ルドン、オディロン (1840-1916)
1899年
リトグラフ・紙
30.8×21.0
額装

 「地の穀物は全く実り、刈り取るべき時がきた」。デューラーでは「黙示録」第13場面の「七つの頭をもつ獣と小羊の角のある獣」において、画面上方中央に「白い雲」の上に座し「金の冠を被った人の子のような者」が、手に鋭い鎌を持って威厳のある姿を現わしている。続いてその鎌が大地に投下されるわけであるが、ルドンはさらにこれに続く場面を選択した。天使は童話に登場する魔法使いのように、頭巾を被り大地まで届く長い衣服を身に纏っている。背後には岩壁が切り立ら、その僅かばかりの裂け目から見える明るい空と重なるように、天使の横顔が描かれた。こうしたモティーフの扱いは、人物の印象をより一層鮮明に刻みつけるための周到な計算に基づくものであろう。天使は右手で大鎌の柄を持ち、ゆっくりと歩んでいる。デューラーでは小さな鎌の表現にされているが、ルドンはそれを巨大な鎌に代えることによって、画面を最も効果的に分割した。すなわち鎌の柄は、先にも述べたように、この版画集においてルドンが特に好んだ右上方から左下方へ向う斜線として描かれている。そのため、垂直線を基調とする諸形象が分断され、とりわけ単調な岩壁の形態モティーフに、造形的に面白味のある変化が与えられた。その上、鎌の刃の部分が人物の背中の線に繋がるように大きく円弧を描いているため、鎌の柄と刃、そして天使の身体が、画面中央に忘れがたい大きな三日月型の形態を生み出すことになった。また白い衣には、ルドンの本領である柔かい陰影ハッチングが用いられ、木炭素描がもつ優美な線的効果が、そのまま転写紙を介して画面上に刷り出された。ビザンチン風の8頭身の姿にされた天使は、神の刈取りの象徴図ともいうべき印象を示している。また背後の岩壁上に象験された不気味な二つの「眼」のモティーフの扱いは、周囲の岩肌の表現と相まって、エルンスト風のフロッタージュを見るような幻想喚起的表現にされた。さらに天使の持つ鎌の大きな刃が、後年の未来派において用いられた表現法に似て、幾本かの輪郭線によって数枚の刃があるように描かれているため、大鎌は時間の推移と運動感を示す形象にされている。(中谷伸生)

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