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ヨハネ黙示録(8)

またわたしが見ていると、ひとりの御使が、底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを持って、天から降りてきた

概要

ヨハネ黙示録(8)

またわたしが見ていると、ひとりの御使が、底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを持って、天から降りてきた

版画 / リトグラフ(石版画) / ヨーロッパ

ルドン、オディロン  (1840-1916)

1899年

リトグラフ・紙

30.3×23.2

額装

 ルドンは第15、16章に記された七つの災害、またそれに続く大帝国バビロンの崩壊を象徴的に告知する「バビロンの大淫婦」の主題に関しては全く触れず、すぐさま『黙示録』第20章冒頭の場面に入る。しかも彼はこの短い章の中から、おそらくは彼の想像力を最も強く刺激する三つの主題を採り上げることになった。すなわち、〔8〕、〔9〕、〔10〕の三つの連続する画面である。〔8〕の画面では今まさに、真暗な暗闇の中から、両翼を羽ばたかせて、微光で体を輝かす天使が、悪龍である蛇を奈落の底に閉じ込めるために、広げた両手で太く重そうな鎖を掴みながら、天上から舞い降りてきたところである。頑丈な鎖の両端が闇の中に消失して見えなくなっているために、より一層闇の探さが想像される。デューラーはこの鍵と鎖を持つ天使を「聖ヨハネ黙示録」連作木版画の最終場面において、ヨハネを「高い山」へ連れてゆき、「新しいエルサレム」を指し示す天使の場面と並置して絵巻風に処理している。それに対してルドンは、他の諸場面には見られない造形手法、すなわち質感のある形態描写とリアルな照明効果を用いることによって、激しく落下する天使を描き出した。あくまで黒く表現された周囲の闇は、ルドンの異に対する並外れた執着を証明するものだが、それは天使の形態における揺らめく微光の精神性を、浮き立たせる地(フォ-リエ)となっているのである。(中谷伸生)

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