三仏寺奥院(投入堂)
さんぶつじおくのいん(なげいれどう)
概要
三仏寺奥院(投入堂) 一棟
投入堂はもと三仏寺鎮守の蔵王殿と称されたものである。建立年代は明らかでないが、平安時代の様式をもっている。その後の沿革は永和元年(一三七五)修理を行ったことが知られるだけで、ほかは明らかでない。
堂は山腹の岩窟内に崖にかかって建てられた小規模な建築で、床下はきわめて長い柱で支えられ、いわゆる懸造をなしている。全体に木割が細く、柱、桁、梁、垂木などには大きく面をとり、垂木の勾配は緩く、流造の母屋の両側に庇屋根をつけるなどの変化に富んだ構造も、よく平安時代の特徴を表している。この堂は山陰地方において最も古く、かつ平安時代の優れた意匠と、奇抜な構成をもつ類稀な遺構である。なお堂の右側(向かって左側)にある愛染堂(附)は小さな建築ではあるが、投入堂と同時の建立と考えられる。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)