新藤氏庭園
しんどうしていえん
概要
新藤氏庭園は,栃木県足利市西部の春(かす)日岡(がおか)と呼ばれる台地の南縁に位置する。新藤氏は江戸末期から昭和にかけて織物業を営んでおり,二代目の睦十郎が明治末期に初代理一郎のために離れを建てた際に庭園も造営されたという。
2階建ての離れは台地の上に建ち,離れが建つ上段部と園池のある下段部には大きな高低差があるが,その地形を活かして落差約3mの豪快な滝が造られている。滝の下には石組護岸のS字状の園池が広がる。また,庭園の東部からの流れは蛇行しながら離れの側を抜け滝へとつながり,西部からの流れは直接園池に接続する。
2階からは高低差のある庭園を眼下に見ることができ,また建物から庭園に出て台地の上段から下段へ,また下段から上段へ歩をすすめるにつれ庭景が大きく変わる。このように垂直方向を軸に様々な景観を観賞できることが大きな特色であり,特に園池の岸からの景観は,大ぶりのチャートで組まれた滝石組や離れ等を仰ぎ見るという迫力あるものとなっている。地形を最大限に活かした空間構成はきわめて特徴的であり,栃木県の造園文化の発展に寄与した意義深い事例である。