楷書玄妙観重脩三門記巻
かいしょげんみょうかんじゅうしゅうさんもんきかん
概要
この巻物は、玄妙観(げんみょうかん)という寺院の正門(せいもん)を改修したさいの記念碑に記した、碑文(ひぶん)の原稿です。玄妙観は、中国東南部の蘇州市に現存する道教の寺院で、その始まりは西晋時代3世紀にさかのぼります。そののち何度か名前を変え、元時代13世紀末には玄妙観という名称にあらためられました。その際、玄妙観の正殿(せいでん)である「三清殿」(さんせいでん)と、正門である「三門」を順次改修し、2つの記念碑を建立することとなったのです。文案は牟巘(ぼうけん)という人物が作り、それを趙孟頫(ちょうもうふ)が書にあらわしました。趙孟頫は、13世紀後半から14世紀前半に活躍した元時代を代表する文人で、とりわけ書に優れました。
本作は書写年代を記しませんが、碑文の内容や趙孟頫の官職などから、趙孟頫が49歳から56歳の間に書いたものと考えられています。冒頭の題額は端正な篆書(てんしょ)です。これに対して本文は強くしなやかな線質と均整のとれた形が特徴的な、実に優美な楷書(かいしょ)で記されます。このような趙孟頫の碑文の書は、8世紀前半に活躍した書人の李邕(りよう)など、東晋から唐時代の筆法を基礎としています。