普賢十羅刹女像
ふげんじゅうらせつにょぞう
概要
普賢菩薩が六牙の白象に乗り、東方浄妙国土より『法華経』を読誦し、受持する者の擁護のため示現する姿を描く画像には、普賢菩薩独尊のもの、眷族である薬王・勇施の二菩薩と、毘沙門・持国の二天王、および十羅刹女の囲繞するもの、十羅刹女のみを伴うものなどが知られる。これらは『法華経』勧発品第二十八、同陀羅尼品第二十六を典拠とし、『法華経』信仰が盛んになる平安時代後期以降に制作されるようになったもので、遺品も少なくない。 本像は、蓮華を踏みながら歩む六牙の白象の背に合掌して坐す普偈菩薩と、これに従う唐装の十羅刹女、および髪を美豆良に結い、玉幡を執り先導する二人の童子を描く。唐装十羅刹女は、天永3年(1112)建立とみられる兵庫・鶴林寺太子堂の内陣四天柱に描かれるのが最古で、画像では藤田美術館本、常忍寺本、法華寺横笛堂仏後壁画など鎌倉時代の遺例が多い。白象の頭頂の三化人は普賢観の三智の無漏頂にあることをあらわすもので、東京国立博物館本をはじめ、廬山寺本などこれを描く例は少なくない。作風は普賢菩薩の着衣に截金文様を置くのに対して、十羅刹女・童子は朱・群青・緑青・白の彩色と墨線によっており、描写は繊細巧緻で藤原仏画の特色をよくとどめる。なお、本館には別に正面向きの普賢菩薩の、二天と唐装十羅刹女を伴う宋風の一図を蔵している。
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公益財団法人 根津美術館