錫杖頭
しゃくじょうとう
概要
錫杖は頂部の輪形に遊環を通し、これを揺すって音を出すもので、『梵網経(ぼんもうきょう)』に出典する大乗比丘十八物の一つ。はじめは僧侶が山野を巡行する際に用いられたが、後には杖としてでなく法要の梵唄に合わせて振り鳴らすなど用途が変化した。本品は輪部を左右に2弧つくり、そのくびれの部分に光背を負い蓮台にのる如来坐像を飾る。頂上は輪端を内側左右に反転して蕨手状にし、輪頂には宝珠を据える。輪内部は下弧下端左右から派生した2本の弧に雲形をつけ、その上に光背を負う三尊像を表している。遊環は欠失。錫杖頭に仏像を表すことは香川・善通寺の唐代の錫杖頭などに先例があり、本品はその伝統を踏む古式な遺品。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.288, no.49.