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木造薬師如来坐像〈円勢、長円作/(北院旧本尊)〉

もくぞうやくしにょらいざぞう

概要

木造薬師如来坐像〈円勢、長円作/(北院旧本尊)〉

もくぞうやくしにょらいざぞう

彫刻 / 平安 / 近畿

円勢、長円

平安/1103

1躯

重文指定年月日:19890612
国宝指定年月日:19900629
登録年月日:

仁和寺

国宝・重要文化財(美術品)

 白河天皇の皇子覚行【かくぎよう】法親王が自坊北院の本尊として造立した薬師如来像で、仏師法印円勢【えんせい】と長円【ちようえん】が康和五年(一一〇三)の四月一日から五月四日まで日参し、製作に当たったことが知られる。円勢、長円は、都の仏師の第一人者としての父子二代にわたる華やかな活躍が文献史料に伝えられているが、本像はその作風と技量とを示す唯一の遺品であり、光背台座に至るまで保存状態のきわめて良好な平安後期檀像の典型としても貴重である。
 像は六寸の如来坐像で、左手の掌には薬壺を載せ、右手は掌を前にして立てる施無畏【せむい】の印とし、衲衣【のうえ】は左肩を覆い、右肩にわずかにかかる。光背は八葉【はちよう】蓮華を裏面にも表す円相の頭光と身光部にあたる方形の後屏から成り、本躰と同形の薬師如来像七躯を円相光の周縁部に、両脇侍の形をとる日光・月光菩薩立像を後屏の左右に配す。台座は本躰の衲衣が上部に懸かる宣字形座で、神将像十二躯を向きや装い、持物に応じた所作に変化をもたせ、各面の腰部に三躯ずつ表す。
 本躰は懸裳の部分と白毫【びやくごう】、薬壺を除き一材から彫出して内刳りを像底より躰部および膝裏に施し、光背は頭光の円相部と後屏、台座は上框各段、腰部各面、請座、下框上段を含む反花に分け、それぞれ板材から彫出する。いずれも白檀【びやくだん】材を用いて素地仕上げとし、光背台座の小像を含めて頭髪に白群、眉目と髭鬚に墨(本躰のみ白目に白)、唇に朱の彩色を加え、本躰の衲衣には、表に菊花丸文を散らす七宝繋【しつぼうつなぎ】文、裏に立涌【たてわく】文と縁取りの花唐草文の切金【きりかね】文様を施す。さらに光背台座は、各区、蓮弁等に宝相華・菱形花・対葉・連珠文を刻出し、縁取りと衣文や葉脈に切金線を置き、地文様に霰【あられ】散らし、線刻を併用した亀甲、斜格子などの切金文様をあしらう。頭光の周縁をめぐる火焔と柄の中央部、台座の下框下段は後補である。

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