首里城書院・鎖之間庭園
しゅりじょうしょいん・さすのまていえん
概要
琉球王府の中核を成した首里城の中でも、正殿の正面に向かって右側に建つ南殿の背後には、国王が日常の政務を行い、賓客を接待する場所として用いた「書院」をはじめ、王子が自らの控所や懇談の場としても用いた「鎖之間」が存在した。書院及び鎖之間のさらに南側には、首里城内郭の南辺をめぐる城壁に臨んで、琉球石灰岩の岩盤・地形を存分に活かした独特の風致を持つ庭園が造られていた。
書院・鎖之間では、正殿などにおける公式の儀礼とは異なり、国王や王子が親しく相手と接するために茶が振る舞われるなど、個人的な関わりを重んじる接待が行われた。庭園は、このような奥向きの場を彩る空間として準備されるとともに、中国から来訪した冊封使(さっぽうし)などの客人に対する饗応のための装置としても重要な意味を持った。
発掘調査の結果、一部に切削された痕跡が認められたものの、岩盤の遺存状況は良好であり、築山へ登る石段、ソテツ・マツを植えた岩盤上の凹み、岩盤築山の裾部に撒かれた珊瑚の破片など、庭園の芸術上・観賞上の価値の骨格を成す地形及び独特の意匠を示す痕跡についても良好に残されていることが判明し、その後の修復事業により価値は確実に顕在化された。