融通念仏縁起絵巻 下巻
ゆうずうねんぶつえんぎえまき
概要
「融通念仏絵巻」は大原の良忍上人(1073〜1132)が融通念仏を感得し、勧進をはじめた由来や、その利益の現証の数々を記したものである。諸本の奥書によって、二巻本として正和3年(1314)に作られたのがはじめであることが知られるが、その原本は伝わらず、作者も不明である。鎌倉末にいたり、大和の当麻あたりに良鎮という大勧進僧があらわれ、この絵巻百余本を作り、家を残さず人をもらさず勧進しようとの大願を発した。土地の豪族である越智氏などに合力を求め、実際に肉筆本の制作に着手したことが、現存する永徳・至徳間(1381〜86)の奥書のある絵巻によってうかがい知られる。本館本は、その良鎮勧進の肉筆本のうちの一本で、下巻のみの零本である。巻末に正和の奥書、良鎮の奥書に続けて、永徳3年(1383)越智家高による奥書がある。絵は量産にともなう卒略簡素の趣において諸本に相通ずるものがあり、それだけにまた特殊の注目を引く。
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