鳥獣人物戯画断簡(甲巻) ちょうじゅうじんぶつぎがだんかん(こうかん)

平安 / 京都府 

平安時代後期/12世紀
紙本墨画
縦:29.2cm 横:51.6cm
高山寺伝来、酒井抱一旧蔵

四巻からなる京都・高山寺所蔵の鳥獣人物戯画のうち、勢いのある墨線を駆使して、兎、猿、蛙を中心にした動物たちの擬人化されたさまざまな動きを描く甲巻はとても有名な作品である。

この甲巻は、もとは二巻であったが、伝来の過程で損傷を受け、現在の甲巻は、その残存部分を一巻にしたものと推定されている。したがって、そこには脱落,錯簡があり、そのほか逸失した断簡が何点か知られている。

本図は逸失断簡のうちの一点で、比較的最近知られるようになった。付属する住吉広高の鑑定書に対応する住吉家鑑定控から、本図が江戸時代後期には喜谷喜六なる者が所蔵したことが知られ、そののち明治時代には収集家として著名な長井十足の手にあった。

江戸時代に作られた模本や、かつてこの断簡と接続していた他の断簡による検討によってこの場面の内容が判明する。すなわち、秋草の間に描かれた動物は二群に分かれ右半の左の拳をあげ、右手に持った扇を振る猿は、その前の鹿を使った競走の場から、乗り手の猿を振り落として疾駆する鹿をとどめようとしているのであり、この様子を市女笠の狐と、柑子を引きずる鼠が振り返っている。また、左半の柑子を入れた曲物を頭にのせ、子を背負った猿、扇を持つ子を肩車する蛙は、これに続く場面に描かれている蹴鞠の場へ向かう一群であり、先頭の蛙がうずくまることから、その場が近いことが知られる。

全体に墨線を主体にした画風であるが、単なる白描画ではなく、蛙の背や猿の顔、さらには女郎花や藤袴の花の部分などに墨彩的手法がみられ、墨の微妙な表現に手慣れた絵師の技量がうかがわれる。
深い愛情に基づく動物観察と熟達した筆法によるデッサン力に優れた佳品である。

鳥獣戯画の筆者として、鳥羽憎正(覚猷、1053-1140)の名があげられるが、図像の研究と収集とによって彼が高度の絵画技術をもち、また文献から彼が機知に富んだ風刺的な戯画を描いたことが知られるものの、鳥獣戯画を描いたということを示す直接的な証拠はない。

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