紙本白描阿弥陀鉤召図
しほんはくびょうあみだこうしょうず
概要
本図は、あらゆる衆生を引き寄せ済度するという阿弥陀如来の本願に基づき行われる密教修法「阿弥陀鉤召法」の意義を戯画的に描いたものである。暢達した墨描により、盲目の僧を力強く引き寄せようとする阿弥陀如来、僧を蓮華茎で押す観音菩薩、その光景を眺める勢至菩薩の姿が大画面に巧みに描かれる。
本図裏面には、平安時代末に高野山を中心に密教図像の収集、書写に努めた玄証(1146~1222頃)の墨書がある。玄証の花押や墨書を有する図像は、高野山月上院を経て京都・高山寺に多く伝来し、指定品を含めた二十点ほどの現存作例を数える。本図も鎌倉時代以降、高山寺に伝来した可能性が高く、これらの玄証所縁の図像中でも特に優れたものである。
本図は、平安時代に遡る大型の白描図像として、またその画題の特殊性から、仏教絵画史上のみならず、国宝「鳥獣人物戯画」等の我が国における白描戯画の成立を考える上でも、文化史上貴重な位置を占める作例といえる。
所蔵館のウェブサイトで見る
国(文化庁 美術工芸品)