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紙本淡彩駿牛図断簡

しほんたんさいしゅんぎゅうずだんかん

概要

紙本淡彩駿牛図断簡

しほんたんさいしゅんぎゅうずだんかん

絵画 / 鎌倉 / 近畿

京都府

鎌倉

1巻

京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85番4

重文指定年月日:20050609
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

一紙に、わずかに頭を下げ気味に、向かって右を向いて立つ一頭の黒牛の姿をほぼ真横からの視点で描いたものである。
 駿牛図は、牛車【ぎっしゃ】の盛行に伴って、それに用いられた名牛を牛飼の技術とともにたたえ、記録することから制作されたものである。現在、駿牛図断簡には、重要文化財に指定された五図のほか、個人蔵本一図、米国にシアトル美術館本、クリーブランド美術館本の二図があって、計八図の存在が知られてきたところである。
 本図は以上の八図の断簡に加えて、最近その存在が明らかになり、文化庁で買取を行ったもので、これらと筆致を同じくする一図である。駿牛図には、かつて紹介された田中家本の一〇図一巻の模本が知られるが、現存する断簡はその図といずれも照合することができ、かつて一〇図一巻の巻子装であったことが知られる。本図もこの模本第四図に一致するものである。また、現存する断簡の多くには「八枚之内」とする住吉廣賢【ひろかた】(一八三五~八三)による箱書があり、この時点では八図となっていたことが知られるが、本図の裏打ち紙墨書にも「八葉之内」とあり、この段階までは八図の中に含まれて伝来したものであることも想像される。
 鎌倉時代末期ころに成立し、詞のみ現存する『駿牛絵詞』は、現在する駿牛図各断簡とは別本と考えられているが、平安時代後期以来の名牛の故実が記されており、名牛を珍重し記録する風潮が平安時代以来あったことを推測させる。『駿牛絵詞』は鎌倉時代後期にはこのほか、諸国産の牛を記述し、延慶三年(一三一〇)の記述がある『国牛十図』が著され、『吉槐記』乾元二年(一三〇三)正月二十九日条には、法眼任禅が「牛馬似絵」を描いた記事が見えるなど、絵の制作をも行う風潮が盛んになったことをうかがわせる。
 本図を含む一連の断簡は、このような風潮のもとで、鎌倉時代後期に制作されたものと考えられている。
 本図の筆致はきわめて丁寧で、安定感のある形象の把握にも優れ、墨の濃淡を使った牛の体の艶や立体感の表現も巧みであり、鎌倉時代の似絵【にせえ】の一領域をも示すものとしても注目される日本絵画史上重要な作品である。既知の著名な駿牛図に一図を加える貴重な作品といえる。

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