チャプスイ店にて
概要
清水登之がアメリカ在住時に現地の中華料理店を描いた作品。広東語に語源を持つ「チャプスイ」とは、アメリカ式中華料理の定番メニュー。炒めた肉や野菜にスープを加えて煮立たせたものを、米飯や麺にかけて食べる。この作品で肝心の料理はほとんど見えないが、客があふれる店内や、忙しそうに立ち去るウェイターの後ろ姿から、店の繁盛ぶりがうかがえる。
東洋風の設えの店内には、さまざまな人物が集う。手前には仲睦まじそうに寄り添う男女が描かれる。男性が身に着けているのは、海軍水兵の制服。画面の右手で談笑する女性は、画家の知人である可能性も指摘される。画面の明度は決して高くないが、人物のボリュームある身体が鈍い光を放つ。
作者の清水は1907(明治40)年にアメリカ西海岸に渡り、農園や工場で働きながら絵画を学んだ。1917(大正6)年にはニューヨークに転居し、類型化されない市井の人々を、表情豊かに描く独自の画風を確立する。本作はニューヨーク時代に清水が師事した画家ジョン・スローン旧蔵の作品でもある。