黒漆宝篋印塔嵌装舎利厨子
こくしつほうきょういんとうかんそうしゃりずし
概要
〓漆【きゆうしつ】は入念で、後補の塗りも比較的少ない。板壁に嵌装された宝篋印塔は、丈に比べて横広の形姿をしており、立体的かつ細緻な金工技術も優れている。扉に付された羯摩形蝶番や輪宝形掛金具も、形式に陥らぬ優美さを示している。附の法華経については、八帖を完備するとともに、奥書から書写年代(嘉禄二年<一二二六>)、筆者(孝阿弥陀仏【こうあみだぶつ】)、書写の経緯などが知られ、かつ類例の少ない同時代法華経の一遺例としても注目される。
〓漆・金工や彩絵の技法を勘案すれば、厨子本体も嘉禄二年を大きく隔たらぬ時期に制作されたと判断される。宝篋印塔を嵌装した同種舎利厨子の中では最も古様を示し、おおよその制作年代も推察される舎利厨子の優品として貴重である。