仏涅槃図 ぶつねはんず

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日本画 / 奈良県 

陸信忠筆
中国・南宋時代 13世紀
絹本 著色 金泥 掛幅
縦157.1 横82.9
1幅
宝寿院(愛知)旧蔵
重要文化財

 釈迦が跋堤河のほとり沙羅双樹の間に入滅する様子を表したもの。仏伝中の重要な一場面である。涅槃を表した作例は、法隆寺五重塔塔本塑像をはじめ早くからわが国で造像されており、また涅槃図を本尊像とする涅槃会も平安時代の初めには恒例化していた。涅槃図は中国からの影響を受けつつ各時代宗派を通じて盛んに制作され、独自の展開をした。
 本図は涅槃図の中でももっとも特異な形式のもので、中国・南宋代の貿易都市・寧波で描かれ、わが国に請来された。沙羅樹が二本の宝樹のように描かれ、また釈迦の周囲の弟子衆にはさほど悲しみの表情はなく、胡人風の人物が香炉をはさんで涅槃を賛嘆するかのごとく踊るのも異例である。こうした図様が成立した背景に、当時の寧波の成熟した信仰環境を想定する意見がある。
 画面向かって右中程に「慶元府車橋石板巷陸信忠筆」の小楷落款があって、寧波が慶元府と呼ばれていた頃(1195~1276)に職業的画工(仏画師)とされる陸信忠(工房)によって制作されたことがわかる。濃密な彩色と細勁な線描、細緻な彩色文様をあわせ持つきわめて強い表現の仏画であり、中間色を多用したであろう先行仏画からの変貌を感じさせる作例である。陸信忠の款記のある作品の中では、当館の十王図とともにもっとも上質の作例である。
 なお、表具上部に「天王御宝物」の墨書がある。愛知・津島神社別当寺宝寿院に伝来した。

奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, pp.314-315, no.164.

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