百万塔 附無垢浄光経陀羅尼
ひゃくまんとう つけたり むくじょうこうきょうだらに
概要
百万塔は天平宝字8年(764)におこった恵美押勝(えみのおしかつ)(藤原仲麻呂)の乱後の動乱を鎮めるため称徳天皇によって発願され、宝亀元年(770)に完成した100万基の小塔である。当初は大安寺や東大寺など十大寺に10万基づつ安置されたが、現在は法隆寺に伝来した4万数千基が残るにすぎず、それらも多くが寺外に所蔵されている。本品も法隆寺伝来の品。塔身部と相輪部に分解することができ、それぞれ轆轤挽(ろくろび)きし白色顔料が塗布されている。塔身部には3層めの屋蓋の頂上から真下に孔が削り込まれ、その中に陀羅尼経(だらにきょう)を1巻ずつ納め、相輪部の下端を孔に差し込んで蓋としている。底裏に「云二四廿二左和万」と墨書され、神護景雲2年(768)4月23日の制作になるものと推測されている。陀羅尼経は『無垢浄光大陀羅尼経』に説かれる6種の陀羅尼のうち4種を選んで印刷したものである。世界でも最も古い印刷物のひとつであるが、木版か銅版か未詳である。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.285, no.33.